戻り梅雨により、各地の梅雨明けの発表がもたついていましたが、7月後半になると相次いで梅雨明けの発表がありました。
各地の梅雨明けは九州南部7月17日ごろ(昨年7月25日ごろ)、九州北部7月22日ごろ(昨年7月25日ごろ)、四国地方7月19日ごろ(昨年7月16日ごろ)、中国地方7月21日ごろ(昨年7月16日ごろ)、近畿地方7月21日ごろ(昨年7月16日ごろ)、東海地方7月18日ごろ(昨年7月16日ごろ)、関東甲信地方7月18日ごろ(昨年7月22日ごろ)となっています。
2024年は、というより2024年も、太平洋高気圧の勢力が非常に強くて、梅雨明けと共に猛烈な暑さが戻ってきました。各地で37℃、38℃はあたりまえなほどで危険な暑さと言うことができます。
まだ梅雨明けの発表がないのは、北陸地方と東北地方(南部、北部)です。週間予報などを見ると、向こう一週間は曇りや雨が続きそうで、来週後半までは梅雨明けの可能性は低いと考えられます。
このため、東北地方や北陸地方では、断続的に雨や雷雨となっています。24日には北海道留萌で1時間に52.5mm(7月の観測史上1位の値を更新)、北海道江丹別でも同47.0mm(観測史上1位の値を更新)、24時間で206.5mm(観測史上1位の値を更新)など非常に激しい雨を観測し、大雨となっているところもあります。
気象庁によると、7~8月は全国的に気温が高め、期間の前半は、前線などの影響を受けやすいため、北日本と東日本の日本海側の降水量は平年並か多く、北・東日本の日本海側の向こう1か月の日照時間は平年並か少ない見込みです。また、台風や湿った空気の影響を受ける時期があるため、沖縄・奄美の向こう1か月の降水量は平年並か多いと予想されています。沖縄周辺は海水温が31℃前後と記録的に高くなっているため、積乱雲の活動も活発です。
1か月平均の地上気圧(図の左)では、北日本を中心に平年に比べ気圧が低く、前線や低気圧などの影響を受けやすい見込みです。沖縄・奄美では、太平洋高気圧の縁を回る湿った暖かい空気の影響を受ける時期があると見られます。上空約1500mの気温(図の右)は、全国的に平年より高く、暖かい空気に覆われやすいことがわかります。
なお、2024年は特に、梅雨明けした地域でも「ゲリラ雷雨」が多い印象です。黒潮の蛇行により日本付近の海水温が高いため、猛暑に比べて湿度もさらに高くなっています。たとえば東京ですと、35℃以上で湿度が60%くらいの日もあり、不快指数は85を超えて「もう我慢できない」という体感になります。こうした面が、各地で積乱雲の発達を促していると考えられます。
梅雨明けしていない地域では大雨や雷雨に警戒、梅雨明けした地域でも猛暑とゲリラ雷雨に警戒が必要で、なかなかシビアな夏のはじまりとなりそうです。
気象予報士 金子大輔
2024年の梅雨明け更新日:2024年8月2日
地方 | 令和6年 | 平年 | 昨年 |
---|---|---|---|
沖縄 | 6月20日ごろ | 6月21日ごろ | 6月25日ごろ |
奄美 | 6月23日ごろ | 6月29日ごろ | 6月25日ごろ |
九州南部 | 7月17日ごろ | 7月15日ごろ | 7月25日ごろ |
九州北部 | 7月22日ごろ | 7月19日ごろ | 7月25日ごろ |
四国 | 7月19日ごろ | 7月17日ごろ | 7月16日ごろ |
中国 | 7月21日ごろ | 7月19日ごろ | 7月16日ごろ |
近畿 | 7月21日ごろ | 7月19日ごろ | 7月16日ごろ |
東海 | 7月18日ごろ | 7月19日ごろ | 7月16日ごろ |
関東甲信 | 7月18日ごろ | 7月19日ごろ | 7月22日ごろ |
北陸 | 8月1日ごろ | 7月23日ごろ | 7月21日ごろ |
東北南部 | 8月1日ごろ | 7月24日ごろ | 7月22日ごろ |
東北北部 | 8月2日ごろ | 7月28日ごろ | 7月22日ごろ |
※気象庁ホームページより
2024年の梅雨入り
地方 | 令和6年 | 平年 | 昨年 |
---|---|---|---|
沖縄 | 5月21日ごろ | 5月10日ごろ | 5月18日ごろ |
奄美 | 5月21日ごろ | 5月12日ごろ | 5月18日ごろ |
九州南部 | 6月8日ごろ | 5月30日ごろ | 5月30日ごろ |
九州北部 | 6月17日ごろ | 6月4日ごろ | 5月29日ごろ |
四国 | 6月9日ごろ | 6月5日ごろ | 5月29日ごろ |
中国 | 6月22日ごろ | 6月6日ごろ | 5月29日ごろ |
近畿 | 6月21日ごろ | 6月6日ごろ | 5月29日ごろ |
東海 | 6月21日ごろ | 6月6日ごろ | 5月29日ごろ |
関東甲信 | 6月21日ごろ | 6月7日ごろ | 6月8日ごろ |
北陸 | 6月22日ごろ | 6月11日ごろ | 6月9日ごろ |
東北南部 | 6月23日ごろ | 6月12日ごろ | 6月9日ごろ |
東北北部 | 6月23日ごろ | 6月15日ごろ | 6月9日ごろ |
※気象庁ホームページより
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梅雨って?
そもそも梅雨とはどんなものなのか、少しおさらいしてみましょう。
梅雨というのは全世界で見られるものではなく、東アジア(中国の南部〜長江流域の沿海部、台湾、北海道と小笠原諸島以外の日本など)でみられる、曇りや雨が多発する特有の気象現象です。期間としては主5月〜7月に発生します。
ちなみに、どうして「梅雨」と呼ばれるようになったのか。その語源に関する説は、梅の実が熟す時期だからという説や湿度が高い為カビが生えやすい時期である事から黴雨、そして梅雨と呼ばれるようになったなどと多岐にわたります。
梅雨時期の健康管理
梅雨は、湿度が高くジメジメとした日が続くため、健康管理には特に注意が必要です。この時期に多く見られる健康問題には、感染症、アレルギー反応、精神的な不調が含まれます。適切な対策を取ることで、これらの問題を予防し、健康を維持することができます。
感染症の予防
梅雨の時期は、高湿度と温度が病原菌の繁殖に適しているため、食中毒や皮膚感染症が起こりやすくなります。対策
アレルギー対策
高湿度はカビの増殖やダニの活動を促進します。これらはアレルギー症状の原因となることがあります。対策
精神的な健康
連日の曇り空と雨天は、気分を落ち込ませる原因となり得ます。これを「気象病」とも呼ばれることがあります。対策
光の管理:自然光が少ない中で、室内の照明を明るく保つことで気分を向上させることができます。
これらの対策を実施することで、梅雨の不快な影響を最小限に抑え、健やかに過ごすことができるでしょう。
記録に残る梅雨入りと梅雨明け
地方 | 梅雨入り | 梅雨明け | ||
---|---|---|---|---|
沖縄 | 早い | 1980年4月20日 | 早い | 2015年6月8日 |
遅い | 1963年6月4日 | 遅い | 2019年7月10日 | |
奄美 | 早い | 1998年4月25日 | 早い | 1971年6月10日 |
遅い | 2018年5月27日 | 遅い | 2020年7月20日 | |
九州南部 | 早い | 1956年5月1日 | 早い | 1955年6月24日 |
遅い | 1957年6月21日 | 遅い | 1957年8月8日 | |
九州北部 | 早い | 2021年5月11日 | 早い | 1994年7月1日 |
遅い | 2019年6月26日 | 遅い | 2009年8月4日 | |
四国 | 早い | 2021年5月12日 | 早い | 1964年7月1日 |
遅い | 2019年6月26日 | 遅い | 1954年8月2日 | |
中国 | 早い | 1963年5月8日 | 早い | 1978年7月3日 |
遅い | 2019年6月26日 | 遅い | 1998年8月3日 | |
近畿 | 早い | 1956年5月22日 | 早い | 1978年7月3日 |
遅い | 2019年6月27日 | 遅い | 2009年8月3日 | |
東海 | 早い | 1963年5月4日 | 早い | 1963年6月22日 |
遅い | 1951年6月28日 | 遅い | 2009年8月3日 | |
関東甲信 | 早い | 1963年5月6日 | 早い | 2018年6月29日 |
遅い | 2007年6月22日 | 遅い | 1982年8月4日 | |
北陸 | 早い | 1956年5月22日 | 早い | 2001年7月2日 |
遅い | 1987年6月28日 | 遅い | 1991年8月14日 | |
東北南部 | 早い | 1959年6月1日 | 早い | 1978年7月5日 |
遅い | 2015年6月26日 | 遅い | 1987年8月9日 | |
東北北部 | 早い | 1997年6月2日 | 早い | 1978年7月8日 |
遅い | 1967年7月3日 | 遅い | 1991年8月14日 |
まとめ
「この日から梅雨になります」とはっきり宣言するものではなくとても曖昧なものと言え、梅雨時期には予想できない大雨による災害が多く出る時期でもあり、こまめな情報収集が必要と言えるでしょう。
なんとなく「この時期だろう」というものは頭に入れておき、鞄に折り畳み傘を忍ばせておきましょう。備あれば憂いなしです。
梅雨時期の良くある質問
全国の気象台が管轄する地方の発表を担当しています。
週間天気予報を元に、気象庁や各気象台の担当部署が検討して、梅雨入りや梅雨明けを発表しています。
明確な定義があるわけでもなく、発表の段階では速報値となり、毎年9月頃に確定値が発表され修正される場合があります。
年間を通して梅雨の時期は、予報が一番難しい時期で気象予報士泣かせの時期でもあります。
梅雨を迎える前に、まるで梅雨に入ったと思わせるような、ぐずついた天気が続くことを言います。年によってはそのまま梅雨入りする年もあります。
台風の渦は反時計回りで、北東側では暖かい空気を梅雨前線に向かって吹きつけるため、梅雨前線に強い影響を与えます。
この2つの前線は季節が違い、梅雨前線は梅雨の時期に発生する前線で、秋雨前線は夏の終わりの時期に発生する前線のことです。
梅雨と呼べるのは、東アジアのみとされていますが、その他の国では雨季としてあります。
梅雨のない北海道を除き、気象庁が統計を開始した1951年以降はありません。
1993年は一度梅雨明けが発表されたものの、沖縄・奄美地方を除き梅雨明け発表が8月下旬になり撤回され、冷夏と長雨により米不足が発生した年でした。
1.防水性と通気性を兼ね備えたアウター
梅雨時期には、突然の雨に対応できるように、防水性の高いジャケットやコートが必要です。しかし、ただ防水性が高いだけでなく、通気性も重要です。通気性が良いと、蒸れを防ぎ、快適に過ごすことができます。例えば、ゴアテックスなどの素材が使われたウェアが適しています。
2.足元の防水対策
雨の日の足元は特に注意が必要です。防水性のある靴やレインブーツは必須です。さらに、滑りにくいソールの靴を選ぶことで、雨の日の事故を防ぐことができます。また、靴の中に水が入らないように、防水スプレーを使用するのも一つの手です。
3.撥水加工されたバッグや小物
バッグやリュックにも撥水加工が施されたものを選ぶと、中の物が濡れるのを防ぐことができます。市販の撥水スプレーを使って、普段使いのバッグにも撥水効果を追加することが可能です。
4.着こなしの工夫
梅雨時期はジメジメとして気分が沈みがちですが、明るい色の服を取り入れることで気持ちも明るく保つことができます。また、重ね着を利用して温度調節ができるようにすると、室内外の温度差にも対応しやすくなります。
2023年の梅雨
2023年の梅雨入り・梅雨明けの確定値が、気象庁から発表されました。梅雨入りについては、北陸・東北地方で2日遅く修正され、梅雨明けに関しては、奄美地方で1日、東海・近畿・中国地方で4日、四国で5日遅く九州南部では2日早く修正されました。
気象庁は、以下のように状況をまとめて発表しています。
・梅雨入りは東海地方でかなり早く、九州北部地方、四国地方、中国地方、近畿地方、東北北部で早かった。一方、沖縄地方と奄美地方で遅かった。
・梅雨明けは、九州南部でかなり遅く、沖縄地方と九州北部地方で遅かった。一方、中国地方、近畿地方、東海地方、東北南部、東北北部で早かった。
・梅雨の時期の降水量(6~7月、沖縄と奄美は5~6月)は、奄美地方、東海地方、北陸地方、東北南部、東北北部で多かった。一方、沖縄地方で少なかった。
そして、確定値の全体を見渡してみると、奄美・沖縄を除いて7月16~25日に一気に梅雨が明けたうえ、西日本(九州以外)→東・北日本→九州、という順番で、列島の真ん中から梅雨明けが広がっていったことが印象的です。最後に梅雨明けしたのが九州です。
個人的な感想としては、意外に修正が少なかったことが意外に思われました。というのは、梅雨が明けても、にわか雨や雷雨の頻発する不安定な天気が続いた地域が多く、梅雨明けの特定が難しいと思われたためです。地域によっては「梅雨明けを特定せず」となっても不思議でないとさえ考えていました。
さらに、通常南海上の太平洋高気圧(夏の高気圧)がオホーツク海高気圧を押し上げることで梅雨明けになるのですが、今年は少し異質でした。大陸からの北方の高気圧が、太平洋高気圧を押し下げるような形で梅雨明けしたからです。
梅雨前線が押し下げられて梅雨が明けると、北方の高気圧に覆われて冷夏になりやすいのですが、2023年はとんでもない猛暑になりました。北方の高気圧はオホーツク海高気圧などではなく、大陸育ちのより「熱い高気圧」だったのです。
二つの「熱い高気圧」は次第に合体し、日本列島を強烈に覆っていきました。東京でも猛暑日(最高気温が35℃以上)の日数は、過去ダントツの22日(2位は2022年の16日)を観測しています。
結果的に猛暑となり、気象庁はこの夏について以下のようにまとめて発表しています。
・夏の平均気温は、北・東・西日本でかなり高かった。日本の平均気温は 1898 年以降で夏として最も高かった
・夏の降水量は東・西日本太平洋側と沖縄・奄美で多かった一方、北日本太平洋側で少なかった。
・夏の日照時間は北・東日本日本海側と北・東日本太平洋側でかなり多かった一方、沖縄・奄美で少なかった
「2023年の夏は暑かった」という見解は、ほぼ全国の方が同意されることでしょう。しかし「雨が凄く多かった」と感じる方と、「少なかった」と感じる方がいらっしゃると思います。
なぜこのような齟齬が起きたのかというと、今年の夏は、例年の太平洋高気圧圏内(砂漠気候)の気候の他に、熱帯多雨林の気候の要素が入っていたためです。
熱帯多雨林では原則として非常に雨量が多いですが、積乱雲による雨であるため、降り方はまばらになりがちです。
しかも地形の複雑な日本列島では、「降るところでは恐ろしく降るが、降らないところは徹底的に降らない」という傾向が起こってしまったことも大きな特徴といえるでしょう。
気候変動の一環として、気候が高緯度側へシフトする、つまり今年のように、真夏は「砂漠気候」に近い気候になるはずのものが「熱帯多雨林気候」になってしまうといった傾向も、今後各地で出現してくるでしょう。
2023年の夏、そして梅雨は、その予行練習とも言える年だったのかもしれません。
7月23日、九州南部の梅雨明けも発表され、続いて25日に九州北部も梅雨明けが発表されました。北陸や東北では平年より2~6日早い、その他は1~8日遅い梅雨明けとなりました。
梅雨明けした地域ではよく晴れて厳しい暑さとなったところが多いですが、例年の真夏に比べて少しからっとした印象がなかったでしょうか。これは、大陸からの乾いた移動性高気圧が、梅雨前線を追い払うようにして梅雨明けしたためです。
やがて、南海上の太平洋高気圧と合体して湿度が高くなってくるものと思われますが、数日間は少し(ほんの少しですが……)ほっとできるくらいの暑さになるかもしれません。
なお、フィリピンの東で発生した台風5号が北西へと進んでおり、台湾方面にむかっています。今後中心気圧935hPa、最大風速50mの「非常に強い」ランクまで発達する見込みです。台風の北上に伴って、周辺には暖かく湿った空気(赤道気団)が流れ込んでくるため、大気の状態が不安定になって、にわか雨や雷雨となりやすくなる見込みです。各地の最新の気象情報にご注意ください。
季節予報によると、向こう一か月の気温は全国的に高めの予想が出ています。このまま厳しい暑さが続く見込みです。向こう一か月の降水量は北海道で多め、その他は平年並みか少なめの予想です。梅雨明けした地域では、台風や雷雨以外に降水がほとんどなく、夏空が続くでしょう。日照時間も同様の傾向で、北海道で平年並みか少ない予想、その他は平年並みか多い予想になっています。
気候学的に北海道には梅雨はないとされていますが、「蝦夷梅雨」と呼ばれる梅雨と似た現象は知られています。そんな北海道では、しばらく曇りや雨の日が多く、すっきり晴れる日は少ない見込みです。
梅雨の前半には、梅雨前線はたいてい教科書通りのふるまいをすることが多いですが、後半、そして末期になるとだんだん不明瞭で解析が難しくなり「何を考えているかわからない状態」になりがちです。2023年はその傾向がいっそう強かったように感じます。どこにいるのかわからず、神出鬼没に表れては豪雨や激しい雷雨をもたらす……そして、さりげなく去っていく……災害が多く予報が最も難しい鬼門のシーズンであると同時に、詩的で「エモい」シーズンでもあると思います。
今後、暑い夏になるとはいえ、2023年はいったいどんな個性を持つ夏になるのでしょうか。熱中症や災害に注意しながら、夏を満喫したいですね。
気象予報士 金子大輔